高阪鈑金工業SINCE 1926 — 大津・坂本
屋根の三角に見える部分を、破風(はふ)といいます。ここの木が雨で傷んでいました。傷んだところは、いったん壊してつくり直すのが確実に思えます。けれど今回は、壊しませんでした。壊さずに直したほうがよい理由が、はっきりあったからです。
大津市内の、瓦屋根の日本家屋です。離れの大屋根に入母屋破風(いりもやはふ)——屋根の三角に見える面と、そのふちを覆う板——がありました。
屋根に上がってまず目についたのは、板の色です。上のほうは木の色のまま、下へいくほど黒く、縦に筋を引いたように変色していました。汚れではありません。雨水が同じところを繰り返し伝ってきた跡です。指で押すと沈むところもありました。
水は下へ流れ、いちばん下の瓦との取り合いに集まります。そこも木が黒く変色し、漆喰が崩れかけていました。
また、板と、その下ののし瓦(のしがわら)——瓦を何段か重ねて積んだ部分——のあいだには水切りがあります。雨水が板の裏へ入らないようにする部材です。ここは木製で板金もかぶっておらず、年月とともに傷んで、一部が飛んでなくなっていました。修理が必要な状態ですが、これが今回の雨漏りの直接の原因かどうかまでは、判断できません。
いっぽうで、板の奥にある柱や母屋(もや)は、しっかりしていました。傷んでいたのは表に出ている板だけです。この見きわめが、工事の進め方を決めることになります。
傷んだ破風を板金で覆う工事は、よくおこなわれます。ただし板金は、それ自体では建物を支えません。力を受け持つのは、その下にある木です。
柔らかくなった板にそのまま板金をかぶせると、ビスが効きません。強い風であおられたとき、留め付けごと動いてしまうおそれがあります。
ですから、板金が確実に留まる面を新しくつくる必要があります。やり方は二つです。
今回は後者を選びました。決め手は水の道です。新しい下地の分だけ仕上がりが手前に出るので、下端に水切りをつけ、雨水をすべて手前の瓦の上へ落とすことができます。既存の板の裏側へ水が回る経路がなくなる、ということです。
解体しないぶん手順が減り、施工は確実になります。高所での解体作業もありません。費用と工期が抑えられたのは、その結果です。安く上げるためにカバーを選んだのではありません。
逆に、奥まで水が回っているのに表面だけ覆えば、傷みを閉じ込めるだけです。壊すべきか、壊さずに済むか。現地で見きわめることが、この工事のいちばん大事なところでした。
足場を組み、傷みの範囲と、奥の柱・母屋の状態をあらためて確かめました。既存の破風板と妻面の板は、外さずにそのまま残しています。
その上から貫材(ぬきざい)——柱と柱をつなぐための木材——で下地を組みます。肝心なのは、留め付けを、奥の健全な柱や母屋まで効かせること。柔らかくなった表面の木にビスを打っても意味がありません。
三角の面に合わせて縦横に木を渡し、面を通します。ここが通っていないと、板金を張ったときに波打って見えてしまいます。
仕上げは木目調のガルバリウム鋼板です。錆びに強く、離れて見ると木の板のように見えます。下端には板金の水切りを、既存の位置より手前に施工し、面をつたう水を手前の瓦の上へ落としています。
同じ手順をもう一か所でもおこない、あわせて瓦のずれも直しました。解体がないぶん、三日間で完了しています。
仕上がりは、深い茶色の落ち着いた見た目になりました。木目の柄が入っているので、屋根全体のなかで浮きません。ぱっと見ただけでは、板金が張られていると気づかないかもしれません。
見えないところでは、板金が効く下地が新しく入り、水は手前の瓦へ落ちるようになりました。もとからあった構造には手をつけないまま、水の道だけをつくり替えたということです。
ご協力いただいたお客様、ありがとうございました。
2か所の入母屋破風それぞれの、工事前と工事後です。写真をクリックすると拡大表示します。
工事前と工事後の、同じ入母屋破風です。木部に残っていた雨だれの跡が、木目調のガルバリウム鋼板に置き換わりました。棟や瓦はそのままなので、屋根全体の印象は変わっていません。


同じ離れの、反対側にあたる入母屋破風です。こちらも同じように、既存を残したまま上から下地を組み、木目調のガルバリウム鋼板で仕上げました。


仕上がってしまえば見えなくなる部分です。何が起きていて、どんな手順で直したのかを順にご紹介します。








木目の柄が入った板金なので、離れて見ると木の板のように見えます。




建物を横から見たときに三角に見える面、そのふちを覆っている板のことです。屋根の面は瓦で守られていますが、破風は雨風がそのまま当たります。屋根のなかで、もっとも傷みが早く出やすい場所のひとつです。
地上から見上げて、次のような様子があれば一度ご覧になることをおすすめします。
高所ですので、ご自身で脚立に上って確かめるのは危険です。現地調査・お見積りは無料ですので、まずはお声がけください。お問い合わせフォームから、地上から撮った写真を送っていただくだけでも判断の助けになります。
木がまだしっかりしていれば、塗装が向いています。費用も板金より抑えられます。ただし数年ごとの塗り替えが前提です。
木が水を含んで柔らかくなっていると、塗装では止まりません。塗料は表面に膜をつくるだけで、傷んだ木を元に戻すものではないからです。今回のように傷みが進んでいる場合は、板金で覆う方法をおすすめします。
状態によります。判断の分かれ目は、奥の構造まで水が回っているかどうかです。
そのうえで大事なのが、水の道を断てるかどうかです。今回は下端に水切りを施工し、雨水が手前の瓦の上に落ちるようにしました。既存の板の裏側へ水が入る経路がないので、覆ったあとに内側で傷みが進みません。
現地で見きわめて、条件が整っていなければ撤去して組み直します。屋根工事のご案内もあわせてご覧ください。
木目の柄が入ったガルバリウム鋼板を使いました。今回の建物でも、離れて見ると木の板のように見えます。和風建築の修繕では、直したところだけが新しく浮いて見えないことを大事にしています。色や柄はいくつか選べますので、現地でご相談ください。