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Case study

大津市・入母屋破風の板金工事
― 壊さずに、水の道を断つ

屋根の三角に見える部分を、破風(はふ)といいます。ここの木が雨で傷んでいました。傷んだところは、いったん壊してつくり直すのが確実に思えます。けれど今回は、壊しませんでした。壊さずに直したほうがよい理由が、はっきりあったからです。

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Overview

工事の概要

工事内容入母屋破風の板金カバー工事(2か所)
既存下地の補強・水切りの新設
瓦の補修
建物瓦屋根の日本家屋
(離れの大屋根)
使用材料木目調ガルバリウム鋼板
下地補強:貫材(ぬきざい)
施工時期・エリア2026年7月(3日間)
滋賀県大津市

3行でわかる、この工事

  • 症状/入母屋破風の木部が、雨だれで縦に黒く変色。指で押すと沈むほど傷んでいました。
  • 診断/板の奥の柱や母屋は健全でした。壊さずに直せると判断しました。
  • 施工/既存の上から下地を組み、木目調の板金でカバー。下端の水切りで、雨水を手前の瓦へ落としています。

Symptom症状 ― 木に残っていた、雨の通り道

大津市内の、瓦屋根の日本家屋です。離れの大屋根に入母屋破風(いりもやはふ)——屋根の三角に見える面と、そのふちを覆う板——がありました。

屋根に上がってまず目についたのは、板の色です。上のほうは木の色のまま、下へいくほど黒く、縦に筋を引いたように変色していました。汚れではありません。雨水が同じところを繰り返し伝ってきた跡です。指で押すと沈むところもありました。

水は下へ流れ、いちばん下の瓦との取り合いに集まります。そこも木が黒く変色し、漆喰が崩れかけていました。

また、板と、その下ののし瓦(のしがわら)——瓦を何段か重ねて積んだ部分——のあいだには水切りがあります。雨水が板の裏へ入らないようにする部材です。ここは木製で板金もかぶっておらず、年月とともに傷んで、一部が飛んでなくなっていました。修理が必要な状態ですが、これが今回の雨漏りの直接の原因かどうかまでは、判断できません。

いっぽうで、板の奥にある柱や母屋(もや)は、しっかりしていました。傷んでいたのは表に出ている板だけです。この見きわめが、工事の進め方を決めることになります。

Diagnosis診断 ― 壊さずに、板金が効く面をつくる

傷んだ破風を板金で覆う工事は、よくおこなわれます。ただし板金は、それ自体では建物を支えません。力を受け持つのは、その下にある木です。

柔らかくなった板にそのまま板金をかぶせると、ビスが効きません。強い風であおられたとき、留め付けごと動いてしまうおそれがあります。

ですから、板金が確実に留まる面を新しくつくる必要があります。やり方は二つです。

  • 既存を撤去して、下地から組み直す/奥の構造まで傷んでいる場合は、これしかありません
  • 既存は残し、その上に下地を組む/奥が健全であれば、こちらで足ります

今回は後者を選びました。決め手は水の道です。新しい下地の分だけ仕上がりが手前に出るので、下端に水切りをつけ、雨水をすべて手前の瓦の上へ落とすことができます。既存の板の裏側へ水が回る経路がなくなる、ということです。

解体しないぶん手順が減り、施工は確実になります。高所での解体作業もありません。費用と工期が抑えられたのは、その結果です。安く上げるためにカバーを選んだのではありません。

逆に、奥まで水が回っているのに表面だけ覆えば、傷みを閉じ込めるだけです。壊すべきか、壊さずに済むか。現地で見きわめることが、この工事のいちばん大事なところでした。

Work施工 ― 三日間の手順

足場を組み、傷みの範囲と、奥の柱・母屋の状態をあらためて確かめました。既存の破風板と妻面の板は、外さずにそのまま残しています。

その上から貫材(ぬきざい)——柱と柱をつなぐための木材——で下地を組みます。肝心なのは、留め付けを、奥の健全な柱や母屋まで効かせること。柔らかくなった表面の木にビスを打っても意味がありません。

三角の面に合わせて縦横に木を渡し、面を通します。ここが通っていないと、板金を張ったときに波打って見えてしまいます。

仕上げは木目調のガルバリウム鋼板です。錆びに強く、離れて見ると木の板のように見えます。下端には板金の水切りを、既存の位置より手前に施工し、面をつたう水を手前の瓦の上へ落としています。

同じ手順をもう一か所でもおこない、あわせて瓦のずれも直しました。解体がないぶん、三日間で完了しています。

Result結果 ― 直したところが、目立たない

仕上がりは、深い茶色の落ち着いた見た目になりました。木目の柄が入っているので、屋根全体のなかで浮きません。ぱっと見ただけでは、板金が張られていると気づかないかもしれません。

見えないところでは、板金が効く下地が新しく入り、水は手前の瓦へ落ちるようになりました。もとからあった構造には手をつけないまま、水の道だけをつくり替えたということです。

ご協力いただいたお客様、ありがとうございました。

Before / After

施工前・施工後

2か所の入母屋破風それぞれの、工事前と工事後です。写真をクリックすると拡大表示します。

① 1か所目の入母屋破風

工事前と工事後の、同じ入母屋破風です。木部に残っていた雨だれの跡が、木目調のガルバリウム鋼板に置き換わりました。棟や瓦はそのままなので、屋根全体の印象は変わっていません。

施工前
施工前の入母屋破風。木部が下へいくほど黒く、縦筋状に変色している状態
施工後
施工後の入母屋破風。木目調ガルバリウム鋼板の破風板金で覆われた状態

② もう1か所の入母屋破風

同じ離れの、反対側にあたる入母屋破風です。こちらも同じように、既存を残したまま上から下地を組み、木目調のガルバリウム鋼板で仕上げました。

施工前
施工前のもう一か所の入母屋破風。木部が雨水で黒く傷んでいる状態
施工後
施工後のもう一か所の入母屋破風。木目調ガルバリウム鋼板で仕上げた状態
Diagnosis & Process

どこが傷み、どう直したか

仕上がってしまえば見えなくなる部分です。何が起きていて、どんな手順で直したのかを順にご紹介します。

工事前の日本家屋。瓦屋根と白い漆喰壁、板張りの外壁が見える
1.現地調査
大津市内の、瓦屋根の日本家屋です。まずは屋根に上がり、破風まわりの傷み具合を確かめるところから始めました。
入母屋破風の木部が下へいくほど黒く、縦筋状に変色している劣化の様子
2.破風の傷み
縦に筋を引いたような色の変化は、汚れではなく、長年にわたって雨水が同じところを伝ってきた跡です。
もう一か所の入母屋破風も同じように木部が変色している様子
3.もう一か所も同じ状態
反対側の入母屋破風にも、同じ傷み方が出ていました。2か所まとめて直すことになった理由です。
妻面の下端、瓦との取り合い部分。木が黒く変色し漆喰が崩れかけている
4.下端の取り合い
面をつたって落ちた水が集まる、いちばん下の部分です。木が黒く変色し、漆喰も崩れかけていました。
既存の破風板を残したまま、その上から貫材で下地を組んで補強したところ
5.既存の上に、下地を組む
黒く傷んだ既存の板は、外さずにそのまま残しています。その上から貫材(ぬきざい)を組み、板金を留めるための面を新しくつくりました。留め付けは、傷んだ板ではなく奥の健全な柱や母屋まで効かせています。
入母屋の三角の面全体に貫材の下地を組み、下端に水切りを受ける横材を通した状態
6.面を通す
三角の面全体に下地を渡したところ。ここで面が通っていないと、板金を張ったときに波打って見えてしまいます。いちばん下の横材は、雨水を手前の瓦へ落とす水切りを受けるための材です。
もう一か所の入母屋破風も、既存を残したまま上から下地を組んだところ
7.もう一か所も同じ手順で
反対側の入母屋破風も、既存を残したまま同じように下地を組みました。
瓦のずれや隙間を補修した箇所
8.瓦も直す
あわせて、瓦のずれや隙間も直しています。屋根に上がる機会にまとめて手を入れておくほうが確実です。
Completed

仕上がりの様子

木目の柄が入った板金なので、離れて見ると木の板のように見えます。

仕上がった破風板金を近くで見たところ。木目の柄が入っている
近くで見ると、木目の柄が入っているのが分かります。
破風板金と瓦の取り合い部分の納まり
瓦との取り合いです。下端に水切りを施工し、面をつたってきた水が手前の瓦の上に落ちるように納めています。
仕上がった入母屋破風の全体。屋根の中で浮かず落ち着いた見た目
屋根全体のなかで浮くことなく収まりました。
足場を組んで入母屋破風の工事をおこなっている屋根まわりの様子
工事中の様子です。破風まわりだけの工事でも、安全に作業するため足場を組みます。
About this work

破風について、よくいただくご質問

破風とは、どこのことですか?

建物を横から見たときに三角に見える面、そのふちを覆っている板のことです。屋根の面は瓦で守られていますが、破風は雨風がそのまま当たります。屋根のなかで、もっとも傷みが早く出やすい場所のひとつです。

破風が傷んでいるかどうか、どう見分けますか?

地上から見上げて、次のような様子があれば一度ご覧になることをおすすめします。

  • 板が縦に黒く筋を引いたように変色している
  • 塗装がはがれて木肌があらわれている
  • 板の合わせ目に隙間が開いている、反っている
  • 先端が欠けている、めくれ上がっている

高所ですので、ご自身で脚立に上って確かめるのは危険です。現地調査・お見積りは無料ですので、まずはお声がけください。お問い合わせフォームから、地上から撮った写真を送っていただくだけでも判断の助けになります。

塗装で直せませんか?

木がまだしっかりしていれば、塗装が向いています。費用も板金より抑えられます。ただし数年ごとの塗り替えが前提です。

木が水を含んで柔らかくなっていると、塗装では止まりません。塗料は表面に膜をつくるだけで、傷んだ木を元に戻すものではないからです。今回のように傷みが進んでいる場合は、板金で覆う方法をおすすめします。

傷んだ破風は、撤去してつくり直さなくてよいのですか?

状態によります。判断の分かれ目は、奥の構造まで水が回っているかどうかです。

  • 奥まで傷んでいる/撤去して組み直します。表面だけ覆っても、傷みを閉じ込めるだけです
  • 表の板だけが傷んでいる/既存を残し、上から下地を組みます。今回はこちらでした

そのうえで大事なのが、水の道を断てるかどうかです。今回は下端に水切りを施工し、雨水が手前の瓦の上に落ちるようにしました。既存の板の裏側へ水が入る経路がないので、覆ったあとに内側で傷みが進みません。

現地で見きわめて、条件が整っていなければ撤去して組み直します。屋根工事のご案内もあわせてご覧ください。

和風の建物ですが、板金にすると見た目が変わりませんか?

木目の柄が入ったガルバリウム鋼板を使いました。今回の建物でも、離れて見ると木の板のように見えます。和風建築の修繕では、直したところだけが新しく浮いて見えないことを大事にしています。色や柄はいくつか選べますので、現地でご相談ください。

屋根・外壁・雨漏りのこと、まずはご相談ください。

現地調査・お見積りは無料です。どんな小さなことでもお気軽に。

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